Topicsトピックス

2022/12/23

令和5年度税制改正大綱(概要)について

●1.はじめに

令和4年12月16日に与党の令和5年度税制改正大綱が発表されました。
研究開発・スタートアップの支援、企業による先導的人材投資を促す観点で、研究開発税制の見直しが織り込まれたほか、インボイス制度の負担軽減措置等が導入されました。
本稿では、今回の税制改正大綱のうち大企業に影響が大きいと考えられる項目について、概要を説明します。

●2.オープンイノベーション促進税制の拡充

特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例について、次の見直しを行うこととされました。

  • 対象となる特定株式に、発行法人以外の者から購入により取得した特別新事業開拓事業者の株式でその取得により総株主の議決権の過半数を有するものが加えられます。
  • 上記の特定株式に係る特別勘定の取崩事由について一定の見直しが入ります。※
  • 払込みにより取得した特定株式について、対象となる取得価額の上限が50億円(現行:100億円)に引き下げられます。
  • 既に総株主の議決権の過半数の株式を有している特別新事業開拓事業者に対する出資を対象から除外するとともに、既に本特例の適用を受けて総株主の議決権の過半数に満たない株式を有している特別新事業開拓事業者に対する出資についてその対象を総株主の議決権の過半数を有することとなる場合に限定されます。

※特定株式を組合財産とする投資事業有限責 任組合等の出資額割合が減少したときは、その減少割合に応じた特別勘定の金額を取り崩して、益金算入されます。

●3.研究開発税制の見直し

研究開発税制について、次の見直しを行うこととされました。

  • 一般試験研究費の額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制について、控除率及び控除額が見直されます。試験研究費の増加率に応じたメリットをより高める一方、控除率の下限は引き下げるといったメリハリのある見直しがされ、控除額が上限に達した企業に対してもインセンティブが機能することを期待し、一律に設定されている控除額の上限額を変動させる新たな仕組みも導入されます。
    なお、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における特例の適用期限は3年間延長されますが、基準年度比売上金額減少割合が2%以上等の場合における特例は、適用期限の到来をもって廃止されます。
  • 特別試験研究費の額に係る税額控除制度について、特別新事業開拓事業者との共同研究及び特別新事業開拓事業者への委託研究に係る試験研究費の額等が加えられ、税額控除率の設定がされます。
  • 試験研究費のうち対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用について、既に有する大量の情報を用いる場合についても対象とされます。

●4.中小企業投資促進税制等の見直し

中小企業投資促進税制について、次の見直しを行った上、その適用期限が2年延長されることとなりました。

  • 対象資産から、コインランドリー業(主要な事業であるものは除かれます。)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものが除外されます。
  • 対象資産について、総トン数500トン以上の船舶にあっては、環境への負荷の低減に資する設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出た船舶に限定されます。

●5.特定の資産の買換えの圧縮記帳の見直し

特定資産の買換えの場合等の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限が3年延長されることとなりました。

  • 既成市街地等内から既成市街地等外への買換えが対象から除外されます。
  • 長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物等への買換えについて、東京都の特別区から地域再生法の集中地域以外への本店又は主たる事務所の移転を伴う買換えの課税の繰延べ割合が80%から90%へ引き上げられ、一方、集中地域以外から東京都の特別区への本店又は主たる事務所の移転を伴う買換えの課税の繰延べ割合が70%から60%に引き下げられます。
  • 先行取得の場合、特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例及び特定の資産を交換した場合の課税の特例を除き、譲渡資産を譲渡した日または買換資産を取得した日のいずれか早い日の属する3月期間(事業年度をその開始以後3月ごとに区分した各期間)の末日の翌日以後2月以内に本特例の適用を受ける旨、取得予定資産または譲渡予定資産の種類等を記載した届出書を税務署へ届け出なければならなくなります。※

※令和6年4月1日以後に譲渡資産の譲渡を して、同日以後に買換資産の取得をする場合の届出について適用されます。

●6.デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の見直し

デジタルトランスフォーメーション投資促進税制について、次の見直しを行った上、その適用期限が2年延長されることとなりました。※

  • 生産性の向上または新需要の開拓に関する要件が、売上高が10%以上増加することが見込まれることとの要件に見直されます。
  • 取組類型に関する要件が、対象事業の海外売上高比率が一定割合以上となることが見込まれることとの要件に見直されます。

※令和5年4月1日前に認定の申請をした事業適応計画に従って同日以後に取得等をする資産については、本制度は適用されません。

●7.適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置

適格請求書等保存方式について、次の見直しを行うこととされました。
適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間※ において、免税事業者が適格請求書発行事業者となる場合又は課税事業者選択届出書を提出して事業者免税点制度の適用を受けられない場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとされました。
※課税期間の特例の適用を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により引き続き事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については適用されません。

●8.適格請求書発行事業者登録制度の見直し

適格請求書発行事業者登録制度について、次の見直しを行うこととされました。

  • 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないこととされました。
    なお、当該課税期間の初日後に登録がされたときは、初日に登録を受けたものとみなされます。
  • 適格請求書発行事業者が登録の取消しを求める届出書を提出し、その提出があった課税期間の翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、当該翌課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して 30 日前の日の前日)までに届出書を提出しなければならないこととされました。
  • 適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、登録申請書に、提出する日から15日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとされました。
    なお、登録希望日後に登録がされたときは、登録希望日に登録を受けたものとみなされます。

●9.グローバル・ミニマム課税の導入

令和3年に、法人税の引下げ競争に歯止めをかけるため、所在地国に関わらず最低15%の法人税が課される仕組み(グローバル・ミニマム課税)を導入することが国際協議において合意されました。
この合意の実施のため、特定外国籍企業グループ等に属する内国法人を対象に、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)、特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)を導入することとされました。
特定外国籍企業グループ等に属する内国法人の各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の申告及び納付は、各対象会計年度の国際最低課税額がない場合を除き、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3ヶ月(一定の場合には、1年6ヶ月)以内に行う必要があります。
なお、特定外国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人は、その構成会社等の名称、その構成会社等の所在地国ごとの国別実効税率、その他必要な事項を、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3ヶ月(一定の場合には、1年6ヶ月)以内に、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により、納税地の所轄税務署長に提供しなければならず、その情報の不提供及び虚偽報告があった場合には罰則が設けられることとなりました。

●10.外国子会社合算税制等の見直し

外国子会社合算税制等について、令和6年4月1日以後に開始する事業年度から、次の見直しを行うこととされました。

  • 特定外国関係会社の適用免除要件である各事業年度の租税負担割合について、30%以上から27%以上へ引き下げられます。
  • 申告書に添付することとされていた、次に掲げる外国関係会社に関する書類について、書類添付義務から保存義務へ緩和されます。
    ① 部分適用対象金額がない部分対象外国関係会社
    ② 部分適用対象金額が2,000万円以下であること等の要件を満たすことにより本制度が適用されない部分対象外国関係会社
  • 申告書に添付することとされている外国関係会社に関する書類(外国関係会社の株式等を直接又は間接に有する者(株主等)に関する事項を記載するものに限る)の記載事項について、その書類に代えてその外国関係会社と株主等との関係を系統的に示した図にその記載事項の全部又は一部を記載することができることとされます。

●11.電子帳簿等保存制度の見直し

納税者の負担軽減や電子化を促進する観点から、電子帳簿等保存制度について、次の見直しを行うこととされました。

  • 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度について、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税に関して、過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良な電子帳簿の範囲が、仕訳帳、総勘定元帳、売掛帳等の補助簿に限定されます。
  • 国税関係書類に係るスキャナ保存制度について、令和6年1月1日以後に保存が行われる国税関係書類に関して、次の見直しが行われます。
    ① 国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件の廃止
    ② 国税関係書類に係る記録事項の入力者等に関する情報の確認要件の廃止
    ③ 相互関連性要件について、国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこととされる書類を、契約書・領収書等の重要書類に限定
  • 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、次の見直しが行われました。
    ① 電磁的記録の保存要件について、保存義務者が国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には検索要件の全てを不要とする措置に関して、その対象者を、その判定期間における売上高が5,000万円以下である保存義務者、その電磁的記録の出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者とするよう見直しが行われます。また、電磁的記録の保存を行う者等に関する情報の確認要件が廃止されます。
    ② 電磁的記録を保存要件に従って保存できなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、保存義務者が行う電子取引につき、納税地の所轄税務署長が保存要件に従って保存できなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求め及び出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件に関わらず、その電磁的記録の保存をすることができることとされます。
    ③ 上記②の見直しに伴い、令和4年度税制改正にて整備された2年間の宥恕措置については、令和5年12月31日をもって廃止されます。

以上が簡単な概要となります。

実務上の不明事項や疑問点がございましたら、是非当グループまでお問い合わせください。

税理士法人令和会計社
Email info@rwk-tax.com


記事一覧に戻る